ニュートン力学とは? わかりやすく解説

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ニュートン‐りきがく【ニュートン力学】

読み方:にゅーとんりきがく

ニュートンの運動の法則基礎確立され力学体系量子力学などに対していう。古典力学


ニュートン力学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/30 14:17 UTC 版)

古典力学
『自然哲学の数学的諸原理』初版

ニュートン力学 ニュートンりきがく英語: Newtonian mechanics)は、アイザック・ニュートンが、運動の法則を基礎として構築した、力学の体系のことである[1]。「ニュートン力学」という表現は、アインシュタインの相対性理論、あるいは量子力学などと対比して用いられる[1]

概要

静止物体に働くの釣り合いを扱う静力学は、古代ギリシアからの長い年月の積み重ねにより、すでにかなりの知識が蓄積されていた[1]。ニュートン力学の偉大さは、物体の運動について調べる動力学を確立したところにある[1]

ニュートン力学は古典物理学の不可欠の一角を成している。絶対時間と絶対空間を前提とした上で、3 つの運動の法則(運動の第1法則第2法則第3法則)と、万有引力の法則を代表とする二体間の遠隔作用として働くを基礎とした体系である。広範の力学現象を演繹的かつ統一的に説明し得る体系となっている。

Principia1846-513、 落体運動と周回運動の統一的な見方が示されている.

ニュートン力学は、1687年のニュートン自身による、3巻から成る著作『自然哲学の数学的諸原理』(略称: プリンキピア、Principia)を通して公表された[1]。ニュートン力学の主要な点はすべてこの中に含まれていると言ってもよい[1]

『プリンキピア』の表現形式は、ユークリッド原論に倣った作図を用いて幾何学的証明を積み上げる方式を採っている。この表現の中には、エルンスト・マッハが指摘したように十分に論理的とは言えない点も含まれており、その後の時代の多くの人々によって整理しなおされ、別の説明方法も与えられている[1]。今日的な「ニュートン力学」の解説は『プリンキピア』とは様相が異なったものとなっており、大学などで「ニュートン力学」と呼ばれている体系は、これを出発点としつつも多くの人々によって改良された、相対論以前の古典力学の体系と見なすのが適切である。

『プリンキピア』の冒頭部分は質量運動量慣性などの定義にあてられているが[2]重さという概念の他に質量という概念を導入したことが画期的だとされている[1]

なお「ニュートンが万有引力の法則などを発見した」という言い方が一般にされることも多いが、これは誤りである。それまでにシモン・ステヴィンエドム・マリオットガリレオ・ガリレイヨハネス・ケプラーら先人によって発展してきた物理学をニュートン力学として体系づけたことが最大の功績であり、古典物理学はニュートンによって一旦完了したといえるのである。

質点に関する運動の法則

プリンキピア内の第一法則と第二法則が書かれているページ(1687年版)

ニュートン力学は、物体を「重心に全質量が集中し大きさをもたない質点」とみなし、その質点の運動に関する性質を法則化し、以下の運動の3法則を提唱した[3][注釈 1]。また、これらの法則は、質点とは見なせない物体(剛体弾性体、流体などの連続体)に対しても基礎となる考え方である[4][5]

第1法則慣性の法則)
質点は、が作用しない限り、静止または等速直線運動する(これを満たすような座標系を用いて、運動法則を記述する)[6][注釈 2]
第2法則ニュートンの運動方程式
質点の加速度
ニュートンのゆりかご

解析力学

ニュートン力学ラグランジュ形式ハミルトン形式で再定式化された。これらは、ニュートンの運動法則を座標系の取り方によらずに一般的に成立するように構成されたもので、ラグランジュ形式では、最小作用の原理変分原理)からニュートンの運動方程式を再現する。ハミルトン形式では、正準変数ポアソン括弧を用いることにより、ニュートンの運動方程式に対応する正準方程式を対称な形で表現することができる。

現代物理学での位置付け

現代の物理学の視点では、ニュートン力学は、「巨視的なスケールで、かつ光速よりも十分遅い速さの運動を扱う際の、無矛盾・完結的な近似理論」と理解される。

相対性理論は、物体の速さが光速よりも十分遅い・重力が十分に小さい(地球レベル)の条件下ではニュートン力学で十分近似されるし、量子力学の結果は、対象物体の質量を大きくした極限では、ニュートン力学の運動方程式の解と一致する。例えば、人工衛星惑星探査までを含む宇宙航行の運動の予測を行う際には、ニュートン力学を用いて十分な精度で計算できる場合が多い。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 『改訂版 物理学辞典』培風館
  2. ^ Newton (1729) pp. 1–7, Definitions .
  3. ^ 松田哲 (1993) pp. 17-24。
  4. ^ 砂川重信 (1993) 8 章。
  5. ^ 原康夫 (1988) 6-9 章。
  6. ^ Newton (1729) p. 19, Axioms or Laws of Motion . "Every body perseveres in its state of rest, or of uniform motion in a right line, unless it is compelled to change that state by forces impress'd thereon ".
  7. ^ Newton (1729) p. 19, Axioms or Laws of Motion . "The alteration of motion is ever proportional to the motive force impress'd; and is made in the direction of the right line in which that force is impress'd ".
  8. ^ Newton (1729) p. 20, Axioms or Laws of Motion . "To every Action there is always opposed an equal Reaction: or the mutual actions of two bodies upon each other are always equal, and directed to contrary parts ".

注釈

  1. ^ 山本義隆 (1997) p.189 で述べられているように、このような現代的な表記と体系構築は主にオイラーによって与えられた。
  2. ^ 砂川重信 (1993) p. 9 で述べられているように、この法則は慣性系の宣言を果たす意味をもつため、第 2 法則とは独立に設置される必要がある。
  3. ^ この定義は比例(反比例)関係しか示されないが、結果的に比例係数が 1 となる単位系が設定され方程式となる。『バークレー物理学コース 力学 上』 pp. 71-72、堀口剛 (2011)
  4. ^ 兵頭俊夫 (2001) p. 15 で述べられているように、この原型がニュートンにより初めてもたらされた着想である。
  5. ^ エルンスト・マッハによれば、この第3法則は、質量の定義づけを補完する重要な役割をもつ(エルンスト・マッハ (1969))。
  6. ^ ポアンカレも質量の定義を補完する役割について述べている。(ポアンカレ(1902))p.129-130に「われわれは質量とは何かということを知らないからである。(中略)これを満足なものにするには、ニュートンの第三法則(作用と反作用は相等しい)をまた実験的法則としてではなく、定義と見なしてこれに訴えなければならない。」

参考文献

関連項目


ニュートン力学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/04 10:26 UTC 版)

力 (物理学)」の記事における「ニュートン力学」の解説

現代力学通じ考え方体系化した人物として、しばしばアイザック・ニュートン挙げられるニュートンガリレオ・ガリレイ動力学学んでいた。またデカルト著書読み、その渦動説についても知っていた(ただしこの渦動説内容について批判的に見ていた)。 ニュートン1665年から1666年にかけて数学自然科学について多く結果得た。特に物体運動について力の平行四辺形の法則発見している。この結果は後に『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア1687年刊)の中で運動の第2法則用いて説明されている。 ニュートンはその著書自然哲学の数学的諸原理』において、運動量 (quantity of motion) を物体速度質量 (quantity of matter) の積として定義し運動の法則について述べている。ニュートン運動の第2法則は「運動の変化物体与えられた力に比例しその方向は与えられた力の向き生じる 」というもので、これは現代的には以下のように定式化される。 d p d t = F . {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} {\boldsymbol {p}}}{\mathrm {d} t}}={\boldsymbol {F}}\,.} ここで .mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}dp/dt は物体が持つ運動量 p の時間微分、F は物体にかかる力を表す。このニュートンの第2法則は、第1法則成り立つ慣性系において成り立つ。 ニュートン自身は第2法則微分用いた形式では述べていない。運動の変化 (alteration of motion) を運動量変化解釈するなら、それは力積相当する

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ニュートン力学

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 13:46 UTC 版)

語源

この分野を確立させたイギリス物理学者アイザック・ニュートン(1642-1727)にちなむ。

名詞

ニュートン 力学ニュートンりきがく

  1. 古典力学一部で、ニュートンの運動方程式用いて表現することができるもの。

「ニュートン力学」の例文・使い方・用例・文例

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